毒気が抜けた!?最近のクリープハイプってバンドの話
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日本の未来を担う子供たちの教育や教養を目的とした番組編成で有名な“NHK教育。そんなチャンネルの人気コンテンツの1つに「みんなのうた」という番組があります。

番組の内容については大抵の方はご存知だとは思いますが、ここ数年は流行りのアーティストなどの楽曲も起用されるようになっており、お子様だけではなく、親御さんも共に楽しめる番組へと進化しているのです。

当然、品格高きNHK教育の番組に起用されるアーティストですので、皆様、世間からの高感度も高いアーティストばかり。一部紹介させていただきますと「いきものがかり」「嵐」「ゆず」「セカイノオワリ」などなど、PTAの皆さんも安心のラインナップとなっております。

そんな「安心・安全」のラインナップが保証されている「みんなのうた」に、2018年なぜか「クリープハイプ」が起用されたのです。いやいや彼らってメンヘラ女子の駆け込み寺的な存在であり、「みんなのうた」なんて平和の象徴に起用していいんですか?

目次

「みんなのうた」への起用はクリープハイプの安全性が証明されたから?

子供とは植物で例えるなら子葉のようなもので、今後どのような花を咲かせ実をつけるかは、それまでの育て方にかかっているといっても過言ではないのです。特に幼少期のお手入れは重要で、いかに適切な肥料(教育)を与えられるかが今後の成長の鍵となっているなんてことも言われています。そんな大切な幼少期だからこそ、安心できるNHKの「みんなのうた」を子供に見せたいという方も多いとは思いますが、まさかのクリープハイプ曲が流れるなんて・・・。NHKは我が国の未来を担う大切な芽を枯らすつもりなのでしょうか?

クリープハイプを健全なバンドだと勘違いした親御さんが『はちみつと風呂場』の歌詞を見たら仰天しますよね・・・。

とはいえNHKが起用するくらいですので、クリープハイプの安全性が証明されたってことなのでしょうか?

過去の彼らの作風からすると中々考え難い状況ではあります。

だってこんな歌を唄っている方々ですので・・・。

万人受けするはずのないクリープハイプってバンド

クリープハイプってバンドの作風を簡単に説明するならば「青年誌」って言葉が相応しいと筆者は思う。例えば正義の主人公が悪の組織を倒すってストーリーがあった場合、少年誌ならばきっとライバルとの協力や主人公の努力による能力の向上などで悪の組織を打ち倒すって感じの明快な展開になるのだが、青年誌ともなるとバトル物に繊細な心理描写や性描写、専門性などの、読者の年齢層や理解度に合わせた様々な要素が追加されていくのです。さらにその結末は必ずしもハッピーエンドという訳ではなく、時には賛否を巻き起こすことも。

そんな作品の深みと読者よって変わる様々な評価があるのが青年誌であり、これこそがクリープハイプというバンドの音楽性であります。

理解することが出来るか出来ないかは、リスナーの経験や共感性に基づくって感じでしょうか。

サブカルメンヘラ女子から強く支持されるバンド!?“クリープハイプ”

現在では映画の主題歌やCMソング、「みんなのうた」のような幅広い層を対象とした楽曲を作る彼らですが、デビュー当初の彼らの音楽性が刺さるリスナーの層って結構狭め。

っていうか10代後半くらいの年中曇り空のメンヘラサブカル女子リスナーが多数でした。

まず“サブカル好き”なんて一言でいってみても共通しているのは人と同じ価値観を好まないって所だけで、その趣向は結構細分化されており、ファッションが好きな人だったり、バンドが好きな人だったり、ゲームやアニメが好きな人だったりと、実際のところ“サブカル”って言葉で一括りするのは少し難し目。

今回紹介しているクリープハイプはバンドですので、当然“バンド好き”のサブルカルユーザーが支持層となる訳なんですが、彼らのファンってなぜだか女性率が高く、なおかつメンヘラって言われる層が多かったんです。それではその辺の理由について筆者の独断と偏見で考えてみましょう。

1.優れた楽曲

クリープハイプってバンドがサブカル好きに支持される根底の理由としては、やはり優れた楽曲って部分が1番大きいのではないでしょうか?どんなジャンルでも優れたものは正当に評価される。当然の事です。

楽曲のイメージを緻密に表現した音色や進行、どれを取っても単調という言葉が該当しない多彩なアプローチ。

それでいてボーカルの歌い回し以外は見事に癖を抑えている演奏のバランス感。

ギターロックって結構ガチャガチャしていて、しつこい印象も強いのだけど、クリープハイプってバンドの音は、とても繊細で余韻すら心地いいんです。

と、いくら人とはちょっと違う趣向を持つサブカルバンド信者でも、完全に盲目という訳ではなく、自らの食指を刺激するマイナーかつキラリと光る楽曲が必要なのです。時には奇抜なだけのバンドに存在に走ってしまう間違いを犯すこともありまけどね。

しかし、こういった理由だけでクリープハイプが地雷女子から支持されている訳ではありません。

2.サブカルバンギャの好きそうな個性的なヴィジュアル

画像引用URLhttps://qetic.jp/music/creephyp-pickup/243522/

彼らが女性から支持される理由として楽曲と同じくらい、いや、もしかすると楽曲以上に重要視されているのは、個性的なルックスと存在感なのかもしれません。

いかにも昨今のバンドマン風といいますか、サブカルバンギャの好きそうな、なんともいえない尾崎世界観の スネークフェィスのキノコヘアー。目線を隠す前髪の長さがまたミステリアス。こういったスタイルは、一般の方からすると少しばかり癖が強い感じもしますが、好みの方には、たまらないヴィジュアルなのではないでしょうか?筆者からみるとイケメンなのかイケメンじゃないのか判断しにくい感じではありますが、どうせ同じ事を言われるなら好みのタイプの方が良い思うのは当たり前のこと。

当然女性ファンも同様で、同じ内容の曲を唄っていても、好みのタイプのバンドマンのが唄っている方が素敵に聴こえるはずです。

 

料理は味だけではなく、視覚も重要な要素の1つであるのと同じことです。そして最後はやはり共感という部分ではないでしょうか。

3.特定の層に共感される歌詞

日本語詞のバンドに大切なのが“歌詞”なのではないでしょうか。英語詞のバンドって結局のところ何を歌っているのかよくわからなくって、楽曲の雰囲気で何となく怒ってるんだな〜とか、悲しんでいるんだな〜なんて判断しか出来ませんが、日本語詞のバンドって言葉の意味合いでもリスナーにしっかりとバンドの世界観をアプローチ出来るんです。そんな歌詞を巧みに操り、リスナーの共感を得ているのがクリープハイプであります。

 

“巧みに”なんて言ってみましたが、バンド中期くらいのまでの彼らの歌詞って男女の関係のドロドロ感や自傷や自虐、日常に潜む怒りや不満などが生々しく表現された毒のようなもの。それゆえ支持層の多くは若年層の尖った女性達が多く、メンヘラ女子の教祖的なバンドと評価されることもありました・・・。毒をもって毒を制すとはまさにこのこと。個人的には『おやすみ鳴き声、さよなら歌姫』や『ABCDC』なんかは毒も薄くおすすめです。

以上のような3点の攻めが成功したからこそ、クリープハイプというバンドは特殊なのリスナーをゲットすること出来たと考えられます。メンヘラ女子が〜などと色々考えてみましたが、よくよく考えてみるとヴィジュアル系のファン層の方がやばめ。結局、熱心なファンの存在するジャンルはどこも似たり寄ったなんでしょうね。

 

年々上がる評価がクリープハイプの毒を奪ったのか?

泣きたくなるほど嬉しい日々に(初回限定盤)(DVD付)(丸スチール缶パッケージ仕様)

クリープハイプというか尾崎世界観の人間性については、作品やメディアの発言を見れば分かる通り、神経質で捻くれ者といった感じでございますが、そういった異端性があるからこそ作品に独自の個性を生み出すことができているのも事実であります。それゆえ、クリープハイプに共感支持するリスナーもある程度の毒を持っている方々が多かった印象ですが、ここ最近は妙に毒気が抜けてきた印象を受けます。

 

2018年にリリースされたアルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』まさにそれ。どうした世界観!?なんか良いことあったのか?なんて感じてしまうほど、ポジティブな言葉。以前までだったら、辛くて悲しい生活に対して皮肉を込めて「泣きたくなるほど嬉しい日々でしたよ」なんて発言をしていたはず。しかし、今作からはそんな皮肉すら感じられず、ただただ現在のバンドを取り巻く環境に対する感謝の気持ちしか感じられません。確かにここ数年は映画やCMのタイアップや書籍のヒット、「みんなのうた」に楽曲が起用されるなど、アーティストとしてのステージが1段も2段も上がった気がします。そんなメジャーシーンにしがみつくため、今作では人畜無害な路線に走ろうとしているのでしょうか?

ニュー・アルバムからミュージックビデオが先行配信された『栞』を聴いた時には、あのクリープハイプが「桜」なんて安直なキーワードの“お別れソング”を作るなんて残念だよ、なんてことも考えましたが、よくよく聴いてみると、今曲って彼らの成長の集大成のような印象を受けます。初期作品にみられた直接的で過激言葉は、比喩というオブラートに包み込むことで歌詞には深みが増し、より緻密で繊細な楽曲へと変わっていきました。多くの楽曲のコンセプトであった“情事”という部分にブレはなく、今作『栞』では爽やかつ悲しく表現しております。成功により毒気が抜けたというよりは、著書『苦汁100%』にも書かれている、自らの音楽をより多くの人達に楽しんでもらいたいという部分をより追求していった形が現在のクリープハイプなのでしょう。

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